久しぶりに読んだ本の感想です。
「汝暗君を愛せよ」を読了しました。
異世界転生もので、380ページもある厚い本です。
内容は政治学?
なかなか手が伸びなかったのですが、主人の
「入り込むのは大変かもしれないけど、面白いから」
の言葉にやっと読み始めました。
2、3日かけてラストまで完走した結果の感想が
「面白かった…」
のひとことです。
主人公が大活躍する派手さはないのに、じわじわと面白さを感じられるおはなしでした。
はじめはなかなか話に入り込めなかった
現世では二代目社長だった男が、異世界の若い国王の体に転生するところから始まる物語です。
主人公の「ぼく」が語り手として説明していく冒頭しばらくは、読むのがキツかったです。
生まれ変わる前の「ぼく」は社長としての才覚もなく、周囲もだんだんお飾り社長として扱っていく…
異世界では、王として治める国は巨額の赤字を抱え、列強の国からは圧力をかけられ、国内では革命の気配もあるというお手上げの状況。
主人公でなくても、「これ、どうするのよ」
と投げ出したくなります。
若い王を取り巻く女性たち
自己分析ができているからこその、自己肯定感の低さは読んでいてもつらいです。
20ページほど読んで、王国の宰相の娘のブラウネさんが出てきて、やっとほっと読み進めることができました。
主人公目線でない視点からの見解はありがたいです。
そのあとも、周囲をとりまく女性が何人も登場してきます。
近衛軍総監のメアリさん、まだ14歳の公爵令嬢のゾフィさん。
3人の娘たちは父親が権力者で、さらには王の側室候補。
そして最後に正室になる他国のお姫様アナリースさん。
(登場する女性キャラが多いので
冒頭のカラーイラストでの人物紹介は助かりました。)
「暗君」の意味とタイトルの意味
「ぼく」は前世では、酒を飲んでビルから飛び降りるという責任放棄をしまったので、この世界では絶対に投げ出すことはしたくないと決心しています。
もちろん死にたくもない。
異世界転生物だと、主人公がとにかくチートだったり、現世での特技を武器にして活躍する話が多いですが、この物語では「生まれ変わっても変わらない無能者」です。
ただ、前世での悔いがこの主人公を動かす強い力になっています。
「暗君」である「ぼく」を女性たちが評価していくところが、まさに「汝暗君を愛せよ」のタイトル込められています。
「ぼく」の自己評価と周囲の評価
このあたりのズレがこの小説の面白いところです。
周囲がこの「ぼく」を高評価するとかいう単純なはなしではないところがいい。
そのひとの立場によって、人の評価は変わって当然です。
「暗君」と評価する人「名君」と評価する人…
そして自分にとってはどちらが都合がいいか。
そしてラストに向かって走り出す
「暗君」としての選択に向かって主人公は走り出すのですが、この選択がまた予想を超えてというか、予想通りというか…
政治というものは、何十年も何百年も経って、「歴史」になってからでないと評価を下すことができないので、「ぼく」がほんとうは「暗君」か「名君」かの結論は最後までわかりません。
「ぼく」と一緒に最後まで走り切った感がある物語でした。
最後のページを閉じた後の読後感がとてもよかった。
面白い本を読みました。
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